ゼロエミ式キノコ栽培マニュアル

キノコの種菌の作り方

菌を殖やす(種菌生産)

いよいよ種菌生産にはいります。 培養した純粋な菌糸を殺菌した種菌用培地に植え替え拡大培養します。


<作業環境>

清潔な場所でできるだけ無菌環境に近づけて行います。

ゼロエミ式無菌作業


<工程1>-種菌用にする培地準備を準備します。

種菌を作るための培地を準備します。基本はオガクズ培地、殻粒培地になります。その他、種菌の培地になりそうな有機廃棄物は順次実験していきます。

オガクズ培地

オガクズ米糠

日本で一般に使われている種菌の培地です。広葉樹のオガクズが無難です。針葉樹のオガクズは通常、加水堆積(野外に3ヶ月放置等)してキノコの菌糸の生長の阻害物質を抜いてから利用します。オガクズも栄養材(コメヌカ、フスマ等)も両方、通常、人間が食べるものではないのでゼロエミ理念に合致した培地です。ただ、穀粒培地に比べて菌糸の伸びのパワーに欠けるような気がします。(本当はどうかわかりません。個人的な感想です)雑菌と戦い、共存しながら栽培するゼロエミ式ではスタート時の菌糸の生長スピードが結構重要です。また、小規模レベルの場合、針葉樹の加水堆積はあまり現実的な方法でない(場所がない、そんなに待てない)ので、加水堆積なしでどこまで使えるか、それと竹などのオガクズは利用できるかなども実験または資料を探さなければと思っています。

■オガクズの入手先

製材店

樹種の確認、できれば広葉樹)

昆虫屋さん

カブトムシ用に広葉樹のオガクズが売っています。熟成、発酵とあるものはダメです。生オガコを購入して下さい。粉砕とあるものはシイタケ原木の粉砕物ですので、一応、使用可能ですが生オガの方がいいです。

オークションサイト

広葉樹、クヌギ、コナラのオガクズで発酵、熟成でないもの、未使用の生オガクズがベストです。 粉砕とあるものはシイタケ原木の粉砕物ですので、一応、使用可能ですが生オガの方がいいです。

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オガクズ培地調整方法

容積比でおがくず10米ぬか1から2くらいで混合します。混合したら水を加えます。水分は握りしめてちょろっと水が染み出るくらいがちょうど良いと言われてます。乾いたおがくずを使用する場合は前日に水を吸収させてください。当日に加水すると容器の下部に吸収しきれなかった水分が溜まってしまいその部分に菌が伸びなくなります。

殻粒培地

原菌を作る

を参照してください。

その他の培地

ゼロエミ式栽培用培地(トウモロコシの芯、豆サヤ、コーヒー粕、ソバ殻等)を殺菌し、菌糸培養して種菌としても使用可能です。また、ゼロエミ式で培養した培地できれいに菌糸が蔓延したものを種菌として使用することもできます。種菌とは理論的には菌糸さえあればいいと思うのですが、どうもそうではないような気もします。種菌培地のエンジンの違い(栄養価)により、接種後の菌糸の生長スピード、勢いが違うような気がしてなりません。とくに、ゼロエミ式のようなほぼ無殺菌のあまり栄養のない培地を使う場合、その違いは顕著な気がします。ただ、これは自分の推測なので、きっちり実験検証したいところです。栄養価の点ではドングリや雑穀などは種菌としてのパワーが十分あると思います。 米のとぎ汁やうどん汁なども活用できないか(例、オガクズに混ぜる、トウモロコシの芯をオガクズにつける等)も研究課題です。調整法は培地種類屋殺菌方法によって違います。培地水分量を60~70パーセントに調整するとよいと思いますが、結構、複雑な計算になると思いますので、とりあえず培地を浸水させてよく水を吸わせ、後によく圧力をかけて水が絞りだせなくなるくらいまで水を切るか、水を適度に混ぜ、消石灰を混合するなど臨機応変な対応が必要になります。


<工程2>-培地を入れる容器を準備します。

培地を入れる容器は以下のものが利用できます。

オガクズ、殻粒培地用容器

細口ビン

種菌用に細口ビンを使用した場合、栽培容器への植菌時、若干、種菌が取り出しにくいです。ただし、口が細い分、作業時に雑菌の混入が少なく一度で全部使用できなくても比較的良好な状態で保存できます。

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広口ビン

口が広いため種菌が取り出しやすい。培地の詰め込みが楽です。ただ、作業時に雑菌が混入しやすく、一度に使わないとコンタミの可能性が少し高いです。またフタ(紙栓)が無菌箱内作業時にかさばって邪魔です。

PP(ポリプロピレン)袋

ビンと違い使いまわしができませんが、袋の大きさにより培地量を調節しやすい(大袋から小袋まで)。使用する際も手でもみほぐせば簡単にバラけるので、取り出しにスプンや棒を使う必要がなく、特に培地混合方式に威力を発揮します。

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<工程3>-用意した培地を容器に詰め込みます。

詰めた後は口をテッシュなどで汚れを落とし綿栓。

オガクズ培地をビンへ

細口ビンに詰める

水分を含んだ調整後のオガクズ培地を細口のビンの詰めるのはちょっと面倒くさいです。漏斗やペットボトルの口部をカットしたものを利用 して詰めます。詰めた後、押圧するのも困難なので、かなりフカフカな状態で詰めることになります。必然的に培地量は少なくなります。フタは綿栓を使用しま す(紙栓でも可)。

広口ビンに詰める

800ccのビンなら培地重量500~550グラム詰めくらいがちょうどいいです。ビン口までオガクズを入れ押圧、またビン口まで入れ て押圧、その繰り返しで肩口あたりまで詰めていきます。詰め終わったら培地の中心に棒などで底まで届く穴を空けます。フタは紙栓、またはキャップに綿栓を 取りつけます。

PP(ポリプロピレン)袋に詰める

殻粒培地をビンへ

細口ビンに詰める

濡れた殻粒を細口のビンに詰めるのはちょっと面倒くさいです。手を筒状にしてうまく入れるか、漏斗やペットボトルの口部をカットしてものを利用して詰めます。

広口ビンに詰める

肩口あたりまで詰めます。フタは紙栓、またはキャップに綿栓を取りつけます。

PP(ポリプロピレン)袋に詰める


<工程4>-殺菌します。

培地内に存在する雑菌、バクテリアを殺すため殺菌します。殺菌後は清潔な場所で冷却します。 殺菌方法は 菌を培養する の工程の殺菌方法に準じます。

殺菌方法は以下の3種類があります。

高圧殺菌法

高圧殺菌釜(圧力鍋のでかいやつ)で120度で30分殺菌が基本です。電力式とガス式がありますが、ガス式の方が経済的です。高圧殺菌釜は高価なので扱う量が少ない場合は家庭用の圧力鍋で代用できます。鍋の底に2センチ程度水を張り、培地入りの容器を入れます。容器の口が水につからないように入れてください。(台座を置くとよいですが、小さい圧力鍋などは難しいかもしれません。工夫してください)ピーと噴出したら火力を調節して30~40分間くらいで殺菌できる思います。ただ鍋によって特性があると思うので自分で実験してコンタミ具合を調べ殺菌時間等をつかむ必要があります。また、培地量、培地種類によっても殺菌時間がかわってきます。殺菌終了後は火を消し、圧を自然に抜いてください。圧がぬけたら容器を取り出し、無菌箱内や清潔な場所に試験管なら斜めに置いて冷却して培地を固めます。

高圧殺菌釜の使い方説明

色々な殺菌釜の紹介

【参考サイト】

【技術分類】1-2-3 基本栽培方法/菌床栽培/殺菌工程

電子レンジ殺菌法

自分は電子レンジが怖いのでオススメはしませんが電子レンジでも殺菌できると思います。使いこなせばかなり便利だと思います。機種やワット数により差があると思うので実験が必要ですが、基本は強で5分、一回切って10分休めてからまた強で5分くらいで殺菌できると思います(PDA培地入り試験管はもっと短時間?要実験)。殺菌時間は容器の大きさ、培地量により大きく変わるとおもいます。また培地が乾燥しやすいです。小さい試験管などをレンジにかけるとかなり乾燥してしまうと思います。培地の水分量を増やすとか殺菌時間を最小限におさえるとか、実験して自分のレンジの殺菌条件をつかむ必要があります。せこいビンを使うと破裂の恐れアリです。また密閉したものはやめてください。恐ろしいです。綿栓でフタをしているので内圧は抜けて大丈夫ですが、綿栓をギュウギュウ詰めは若干危険かもしれません。いずれにせよ注意して作業してください。ここに書いてある通りにして破裂しても責任は持てません。レンジ殺菌法はほとんど実験したことがないので。

電子レンジ

常圧殺菌法

蒸気釜(密閉していない)に培地(試験缶、ビン等)を入れて98度で4から6時間殺菌する方法です。もしくは、一回2.3時間を3日間に分けて殺菌します。釜は鍋でもペール缶でもドラム缶でも使えるので釜の購入費自体はさほどかかりませんが、殺菌時間が長時間にわたるためエネルギーの消費が莫大です。どちらかというと栽培用容器殺菌または大量に種菌を生産する場合に使用する方法です。元菌作りの試験管やらビンを殺菌することもできますが、大した本数ではないのでガス代がもったいないですし、小さい鍋の場合すぐ水が蒸発してしまいますので管理が難しいです。

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<工程5>-菌を移します。

菌糸を殖やすために表面積の広い培地に移植します。

→移植作業手順

PDAで培養した菌糸から

購入種菌やオガクズ、殻粒培地から

オガクズ、殻粒培地に蔓延した菌糸から薬サジ、スプーン、小サジなどを使って培地をほぐし、すくって種菌用培地に入れます。作業は無菌室(またはそれに準じた場所)で行います。寒天培地より簡単に移植が行えます。、ただ、元菌への雑菌の混入は寒天培地より多少見つけにくいので失敗の可能性は若干高いです。そのため、移植時には容器をよくアルコール消毒すること、元菌の上部は掻きだし廃棄して使わないようにします。元菌はそれを元に拡大培養(多くの種菌を作る)するものなので、その元の菌がコンタミしていると被害は広がります。いかに元菌を雑菌の混入のない菌糸にすることが重要です。被害を最小限にするには元の容器を試験管や小ビンにして数本用意して、各容器からの拡大数を5とか10程度におさえるなどするといいと思います。(ただ、実作業では面倒なので1本で済ましてしまいますが。)


<工程6>-菌を培養します。

菌糸の移植が完了した容器は20度前後(30度以下)で管理して培養します。雑菌、バクテリアに侵されずキノコの菌糸のみが蔓延すれば成功です。


種菌ができたら以下のページを参考にして栽培を始めましょう。

ゼロエミ式キノコ栽培マニュアル