菌がつくり出す循環型地域社会
環境低負荷型ゼロエミ式きのこ栽培
地域内エコシステム型原木栽培
地域エネルギー活用型菌床栽培


地域エネルギーで目指す持続可能な農業
営農型原木椎茸栽培
温泉熱利用菌床きくらげ栽培

ゼロエミッションパーク構想2001因州しかの菌づくり研究所基本計画

zeroemipark
1999年に環境配慮型のきのこ栽培に着手し、その発展形として2001年に『ゼロエミッションパーク構想』を策定いたしました。現在(2025年)鳥取市気高町睦逢にて、社会情勢や事業環境の変化に合わせ若干の計画変更を加えながら、着実にパークの実現に向けた取り組みを進めております。

ゼロエミ式簡易きのこ栽培技術の開発

現在までゼロ環境負荷で簡易に取り組めるキノコ栽培技術「ゼロエミ式きのこ栽培方法」の開発に取り組んでいます。目指すのは、低環境負荷・低コスト・誰にでもできる技術の確立です。

日本のきのこ栽培の現状

日本では原木栽培(丸太で育てる方法)のほかに、オガクズ・米ぬかなどを使用し、高温殺菌後、ビン詰め・袋詰めで栽培する菌床方式が主流です。この方法では、培地を高温で殺菌処理し、雑菌の繁殖を防ぐことでキノコ菌の成長を促します。1〜3kg程度の培地単位で管理できるため、温湿度の調整が可能な室内で一年中計画的に栽培できます。しかしながらこの菌床栽培方式は、

- 殺菌・栽培施設(自動詰め機・接種機・栽培舎など)の導入にかかる初期費用が非常に高額
- 費用回収のために大規模生産・薄利多売が求められ、小規模経営では困難- 中国産の安価な輸入品が市場を圧迫

といった課題を抱えています。

結果として、現在のきのこ栽培は農業ではなく、工業的な量産モデルへと移行しています。安定した経営が可能なのは、大規模工場と販促戦略を兼ね備えた企業のみというのが現状です。

きのこ栽培方式別比較表

項目 原木栽培 菌床栽培 ゼロエミ式栽培
初期コスト 低(原木自伐でほぼゼロ) 高(殺菌・栽培施設が必要) 低〜中(簡易設備で対応可能)
環境負荷 低(自然環境利用) 高(エネルギー・廃菌床処理) 低(非殺菌・自然資材活用)
技術難易度 中(自然管理・季節依存) 高(無菌操作・機械管理) 低〜中(誰でも扱える設計)
収益性 中(収量は季節・品種に依存) 高(通年栽培・高収量) 中〜高(収量次第で高収益も)
対応品種 主にシイタケ・ナメコ 多品種(エリンギ・ブナシメジ等) 工夫次第で多品種対応可能
販路・差別化 ブランド化しやすい 価格競争に巻き込まれやすい 環境・地域性で差別化可能
目指すきのこ栽培

ゼロエミ式きのこ栽培は、従来の栽培方法を否定するものではなく、別の視点から新しいきのこ栽培のあり方を提案する試みです。日本の伝統的で現在はほとんど使われていない技術や、海外の知られざる栽培技術の中から有用なものを選び出し、それらを応用・統合することで、ゼロエミ(ゼロ・エミッション)運動の理念に沿った栽培方法の確立を目指しています。

ゼロエミ式きのこ栽培の基本理念

- 環境負荷の低減(低エネルギー)
雨水利用、太陽熱、バイオガスなどの自然エネルギーを活用

- 廃棄物ゼロ(循環型資源活用)
植物系の有機廃棄物や食品残渣、使用後の廃培地などを再活用することで廃棄物の発生を抑制

- シンプルで誰でもできる(低コスト・低技術)
複雑な設備や専門技術を必要とせず、自然条件を活かした手法で、初心者でも取り組みやすい栽培設計

これらの理念に基づいて生産されるきのこは、従来の商業的な栽培方法で見られるような整ったサイズや均一な外観とは異なるかもしれません。また、栽培可能な品種が限られたり、計画的な大量生産が難しい面もあります。しかしながら、このような制約を超えて、多くの可能性を秘めた栽培技術としての価値が十分にあります。環境配慮・資源循環・地域性といった観点から、今後の持続可能な農業の一環としての活用が期待されます。

沿 革

1999~2001(コロンビア・サンタロサデカバル)

Centro Internacional de Agricultura Orgánica CIAO(国際有機農業センター)

ciao
  • コーヒー生産残渣を利用したきのこ栽培方法研究
  • その他未利用資源を活用したきのこ栽培方法の確立
  • 低コスト・低環境負荷・持続可能なきのこ生産方法研究

2002(コロンビア・マニサレス)

NUTRIR子ども食堂

nutrir
  • ゼロエミ式きのこ栽培を活用した児童への教育実践
  • 生産きのこの販売による現金収入の拡大
  • きのこ栽培キット開発

2003~2012

ゼロエミ式キノコ栽培普及会CiaoJapan

ciaojapan
  • ゼロエミ式きのこ栽培に利用可能な各種廃棄物の検証実験
  • ゼロエミ式きのこ栽培導入による農福連携の可能性の検討
  • アメリカミズアブ等を活用した廃菌床リサイクル法の研究
ゼロエミ式キノコ栽培普及会-CiaoJapan(以下、当時のサイトTOP本文から引用紹介-2003)

ゼロエミ式きのこ栽培法について

ゼロエミ式キノコ栽培法は、ゼロエミッション研究構想の一環として、各国で導入されつつある栽培技術です。この方法では、食品廃棄物や農業残渣などを培地に利用し、可能な限り熱エネルギーの使用を抑えながら、消石灰などによる抑菌処理を施し、きのこを粗放的に栽培します。環境負荷が極めて少なく、持続可能な農業の実践例として注目されています。

日本ではまだ広く普及していない栽培法ですが、私は1999年から2002年にかけて、コロンビアのコーヒー地帯にある現地NGO団体「CIAO(国際有機農業センター)」およびコロンビアの子供食堂にて、この方法の技術開発・実験実践を行いました。2003年以降は、NPO法人ゼリジャパンの活動の中で研究を重ねました。

この栽培法は、原木栽培法、菌床栽培法に続く「第三のキノコ栽培法」として、より広く認知され普及する可能性があると考えています。最も簡単なキノコ栽培法だと考えています。

環境問題への対応と循環型産業システムの必要性

近年、環境問題への関心が高まる中で、国や企業は生産活動に伴う資源・エネルギーの消費だけでなく、資源の循環的な再利用や廃棄物ゼロ(ゼロエミッション)を目指した持続可能な生産システム——すなわち「循環型産業システム」の構築が求められています。

一企業が排出する廃棄物が、別の企業にとって有用な資源となることもあります。従来、一社単独で完結していた生産システムを見直すことで、これまで見過ごされていた環境的価値や新たな収益の可能性が発見されるかもしれません。

環境保全は「個人の意識」から

国や企業は、結局のところ「個人の集団」です。個人の環境意識が高まらなければ、社会全体としての持続可能な発展は実現しません。私たち一人ひとりが環境問題に対して高い意識を持ち、具体的な行動を起こすこと——それこそが環境保全の原点であり、未来の社会維持への第一歩です。

ゼロエミ式きのこ栽培で循環型産業システムを身近に体験

少し堅苦しい話になってしまいましたが、「循環型産業システム」と言われても、正直、何のことかよくわからない…という方も多いかもしれません(私自身、まだ完全には理解できていません)。また、環境に関する専門用語はちょっと敷居が高く感じられると思います。

そこで当サイトでは、そんな「循環型産業システム」を気軽にミニ体験できる方法として、ゼロエミ式きのこ栽培を紹介しています。家庭や地域、学校など身近な場所でこの栽培法を体験することで、環境への意識が自然と高まり、「廃棄物ゼロ運動(ゼロエミッション運動)」をより身近に感じてもらえたら嬉しいです。

地球環境の改善は、一人ひとりの意識から始まります。 この栽培法をきっかけに、環境との関わり方について楽しく学んでみましょう。

ゼロエミ式キノコ栽培法手順

STEP
培地準備

家で栽培する場合はコーヒー粕やトウモロコシの芯、果物の皮など、畑の残渣を使う場合には豆サヤや野菜の茎葉、穀物類の殻などを用意します。そのまま使えるものもありますし、粉砕したり、乾燥させなければダメなのもあります。色々なものが利用できるのでやってみて何が使えるかを見つけてみましょう。

STEP
抑菌処理

用意した材料を石灰水に浸水したり、石灰を混合したり、煮沸したり、熱湯をかけたり、レンジでチンしたりして、きのこ栽培の邪魔になる菌やバクテリアを抑菌、殺菌し、キノコが嫌いな成分のアク抜きをしたりします。材料の形や質、水分によってやり方が変わってきます。使う材料に一番合った方法を見つけましょう。

STEP
植菌

キノコの種(主にヒラタケ類)を材料を入れた容器に入れます。ゼロエミ式キノコ栽培では完璧な殺菌をしているわけではないので、材料に万遍なく種(菌)を混ぜる方が雑菌にやられる確率が減り成功率が上がります。また、通常より多目に種を入れるのも成功率を上げるコツです。材料が水分でベチャベチャだと雑菌にやられる原因になります。

STEP
培養

直射日光の当たらない場所で材料が菌で真っ白になるまで培養します。品種、材料の種類、培養温度などにより培養期間は異なりますが、1~2カ月で培養は完了します。菌は寒さで死ぬことは滅多にありませんが、あまりにも寒いと成長が遅くなります。暑さはヒマラヤヒラタケなら30度でも耐えますが、培養初期は弱いので15~25度くらいで培養するのがベストです。

STEP
発生

キノコは素晴らしい「体内時計」の持ち主です。キノコを出す力が溜まり、温度、湿度の条件が整えば勝手にキノコを出し始めます。培養が完了したものを木陰などに置いておけば、出たい時に出てきます。主に春から梅雨時期と秋の雨が続いた後に発生します。無理に発生させたい場合は温度管理、湿度管理が必要になってきます。

STEP
収穫

販売容器の形に合わせるような栽培方法ではないので、出てくるキノコの形は様々です。手のひら級のキノコもあったりします。収穫したら新鮮なうちに食べましょう。余ったら乾燥させても冷凍しても旨味は増します。ヒラタケ類は料理の味を良く吸うキノコです。料理がうまければうまいほどおいしくなるキノコです。腕をふるって調理してやってください。

STEP
収穫後

だんだんと出てくるキノコの量は減ってきますが、傷んでなければ何度か収穫できます。収穫が終わった培地は肥料にしてもよいですし、ミミズのエサにしてもいいです。家庭で出たものを材料としたなら生ゴミとして棄ててもいいですが、出来れば土に埋めて自然に還してあげてください。

ゼロエミ式きのこ栽培の基本理念

一般的なきのこ栽培、特に菌床栽培は、高い品質と収量を実現できる一方で、高価な設備を導入必要となり、また設備がなければ無菌作業等の専門的な知識や技術が求められるため、初心者にとってはハードルが高い方法です。設備投資や高温殺菌等にかかるエネルギー負荷も大きく、環境への影響も懸念されます。

それに対して、ゼロエミ式きのこ栽培法は、誰にでも取り組みやすく、かつ環境にやさしい方法として提案されています。この栽培法は、以下の4つの“LOW”を基本理念とし、持続可能なきのこ栽培を目指しています。
基本理念 説明
Lowテクニック 専門知識不要。誰でも簡単に実践可能
Lowエネルギー 高温殺菌などの工程を省略し、省エネで栽培
Lowコスト 廃棄物や残渣を培地として再利用
Lowダメージ 作業工程全体で環境負荷を可能な限り抑制

この4つのLOWを守ることで、環境に優しい栽培が可能になりますが、通常の菌床栽培のように収量や品質を安定して得ることは難しくなります。培地の種類、気候条件、技術レベルなど様々な要因によって、結果は大きく左右されるため、形の揃ったきれいなきのこが必ず収穫できるわけではありません。それでも、工夫次第でしっかりときのこは育ちます。

必要なのは、ほんの少しの労力と好奇心

ぜひ本サイトの栽培マニュアルと実践事例をご参考に、ご家庭や教育現場の片隅でゼロエミ式きのこ栽培を体験してみてください。

この栽培法は、機械のマニュアルのように手順通りにすれば必ず成功するものではありません。試行錯誤と創意工夫を重ねながら、栽培を楽しむ過程そのものが大切です。失敗を通して学び、環境意識を自然と育んでいく——それがゼロエミ式きのこ栽培の本質です。

きのこが育つ喜びを通して、廃棄物や残渣が有用な資源であることに、きっと気づいていただけると思います。何より、きのこが出ると楽しいです。

2013~2022(鳥取市鹿野町)

因州しかの菌づくり研究所因菌研

因州しかの菌づくり研究所
  • きのこ栽培を活かした持続可能な循環型地域づくり
  • 地域エネルギーを活用したきのこ栽培方法の確立
  • きのこ栽培による農福連携の実践モデルの構築
鳥取市から旧鹿野町農業バイオセンターを、2017年4月から2022年3月までの間、NPO法人いんしゅう鹿野まちづくり協議会へ貸与されたのを受け、「因州しかの菌づくり研究所(因菌研)」を立ち上げました。当サイトは自分が以前運営していたきのこ栽培サイト(CiaoJapan)が元になっていますが、情報が1999年から2011年くらいで止まっているので、今回は更新版としてきのこ栽培だけでなく「きのこ」をど真ん中に置きながらも、もっと大きな枠組みで地域に密着した楽しい循環型社会づくりに貢献していく取り組みをしていこうと考えています。
因州しかの菌づくり研究所
因州しかの菌づくり研究所
因州しかの菌づくり研究所

2023~2025現在(鳥取市気高町)

Ecobonきのこ栽培型太陽光発電所兼研究所