ゼロエミ式キノコ栽培マニュアル

ゼロエミ式キノコ栽培工程

発生

培養が完了したらいよいよ発生です。いっぱいキノコをだしましょう。 


自然発生と強制発生

空調栽培と自然栽培

管理方法でわけるとキノコ栽培は空調栽培と自然栽培の二つに分けられます。いずれの形態で栽培するかによってキノコの発生方法も変わってきます。

空調栽培とは

キノコの持つ発生センサー利用して環境調節設備(冷暖房、加湿器等)により温度と湿度を人工的に管理調節しキノコの発生をコントロールする方法です。

正確なキノコセンサー

キノコの菌糸は自分でキノコ(子実体)を出す時期、環境を知っています。それは見事なもんです。

2007年5月から6月にかけてコーンコブ(トーモロコシの芯の粉砕物)をゼロエミ式で70袋ほど接種し(ヒマラヤヒラタケ&ウスヒラタケ)、部屋の中と納屋に放置しておきました。この夏は酷暑で部屋の中など昼間温度計は35度を指していることが多かったです。 培養は完全に終了していましたが、待てど暮らせどキノコはでてきません。納屋の方は水が撒けるので床と棚にボロ毛布を敷き詰め散水しました。その結果、ウスヒラタケの方は発生してきたのですが(発生温度が高い?)、ヒマラヤヒラタケは一向に発生してきませんでした。

仕方ないので、培地を浸水させるか、土にでも埋め込んで発生させようかと思いましたが、思い直してこのままほっといてみようと思い観察していました。すると10月末になり気温が下がり、湿度が少しあがってくると、全袋(数袋失敗)一斉に発生してきました。4週にわたり接種したものが一挙に発生してしまったので、自分で食べれる分だけ残してあとは全部知人にプレゼントしました。よくもまあこんだけの数がまるで掛け声でもかけたかのように同時期にキノコを出すもんだと改めて感心しました。

まるで精密なセンサーがついているかのようです。


温泉熱で加温したキクラゲハウス

温泉熱で加温したキクラゲ発生ハウス

 
上の画像のように加湿、温度調整設備投資等、ランニングコストがかかります。また温度管理、湿度管理等のためエネルギーを消費しますが、計画的に栽培できるメリットがあります。キノコの発生条件にあわせて管理するので培養状態さえよければキノコが発生しないということはまずありません。

自然栽培(発生)とは

空調設備は使用せず、簡素な小屋などで、自然の環境下、気象条件で粗放的に栽培する方法です。

自然は一年中、キノコの発生条件にあわせてくれるわけでないので、春、秋のキノコの発生時期では自然にキノコが発生してきますが、その他の時期はキノコが発生しなくなります。空調設備などの設備投資費が抑えられるためコスト的に、また自然の気象条件を利用しエネルギーを消費しないため環境的によい方法ですが、一年を通して栽培するのは難しいです。

ゼロエミ式では

基本的に環境に負担をかけない自然栽培で行います。そしてなるべく一年を通して栽培できるよう色々工夫をします。

だからと言って、ゼロエミ式の理念からはちょっとズレますが空調栽培を否定するものでもありません。各人が自由に栽培設計してもらってかまいません。一年を通して大量の廃棄物を利用して大量にゼロエミ式で栽培したいとうひとに完全自然栽培を求めるのはこの四季のある日本では酷だと思います。

その場合は真夏、真冬のみ空調栽培、残りの季節を自然栽培に切り替え可能な施設をデザインするなどの工夫をしてなるべく環境に負担をかけないようにすることが大切です。できる範囲で環境によいことを最大限にしましょう。

日本には四季がある

当たり前ですが日本には四季があります。情緒ある日本の四季ですが、ゼロエミ式にはなかなか厳しいです。日本ではキノコが出る時期は自然環境下では基本的(種類によって違いはあります)に年二回、春か梅雨時期と秋です。自然環境下での栽培が基本のゼロエミ式だと日本では普通に栽培すると年2回、春に 1,2ヶ月秋に1,2ヶ月しか収穫チャンスがないことになります。

一方、自分がゼロエミ式を研究、実践してきたコロンビアは赤道に近いこともあり四季がありません。自分が住んでいた地域は標高1600メートルちょっとで、年間平均気温が18度。一日の温度変化は15度から25度。これが一年を通して変わりません。自然が空調設備を備えているような環境だったので、いつ接種しても培養が終われば勝手にキノコが発生してくる最高の気象条件でした。

気象条件の悪い日本では、割り切って年に2回収穫できればOKと考えるのが一番ですが、廃棄物は一年中あるので、なんとか空調設備を使わずに1年を通して発生させられるように現在、色々な方法を模索中です。

発生条件

環境(培養状態、気象条件等)がよければほっておいてもキノコは発生します。ただ、いつもそんないい条件が整っているわけではありません。強制的に発生させなければ全然キノコが発生しないこともあります。そのためにはまずキノコの発生条件を頭にいれておくことが必要です。

各きのこの発生条件等は以下のサイトが詳しいです。

株式会社キノックスきのこの栽培法

自然発生方法

キノコに最適の環境条件が整っていれば、培養完了後、しばらくするとキノコの芽を培地上に見つけることができると思います。芽を見つけたら以下の処置を施しましょう。

ビニール袋の場合

袋の口をあける。湿度が高い条件なら全開しても構いませんが、湿度が低そう(80パーセント以下)だったら、まず袋口を半開きにして、キノコの成長に合わせながらだんだんと開けていくようにしましょう。もし、培地上部でなく、袋内部の横にキノコの芽を見つけたら、芽をキズつけないようにその芽のまわりの袋を小さく破く、または十字にカットするなど、キノコの芽がそこから出て成長できるようにしてください。

コーヒーパーチ培地

ビニールの口を開け方を調整

小穴方式。穴から芽が出てきます。

トウモロコシさや培地。袋に隙間がある場合、袋内部の横からキノコの芽がでてくることがあります。その部分の袋を破いてキノコを成長させます。

小穴方式による吊り下げ発生の様子

 

ペットボトルの場合

ペットボトルの加工方法により変わってきますが、基本はビニール袋の場合と同じです。栽培形態や環境により方法は柔軟に変えていかなければならないものなので基本を押さえた上で色々試してみてください。

ビニール袋をかぶせて保湿。

強制発生方法

菌糸が培地全体に蔓延し培養がすっかり完了してるのに待てど暮らせどキノコが出てこない場合は強制的に発生させましょう。

強制発生のタイミング

培養が完了(菌糸が培地に蔓延)してから1ヶ月半から2ヶ月(出てくるまで、ずっと根気強く待っても構わないのですが)くらいはキノコの芽がでてくるのを待ちましょう。使用している培地によってこの期間は違うので一律で説明するのは難しいのですが、だいたい2ヶ月待って発生してこなかったら、発生条件を培養している環境が満たしていないと判断し、強制発生の手段をとっても構いません。培地と環境(温度、湿度)を人工的に調整して発生条件に近づけ発生を促します。

方法

どんなに頑張って以下に紹介する方法を講じても栽培環境が最悪(酷暑、極寒)ならばキノコは発生しません。強制発生方法に加え、気象条件(温度、湿度)を発生条件に近づけるようにしなければいけません。ここで紹介する方法は空調設備を使用しないゼロエミ式の方法です。

培地湿度調整

培地が乾燥気味だとキノコが発生しません。湿度90%程度が目安です。

培地のまわりに湿らせた布、新聞等を置いたり、

濡らした紙を置いて保湿。

濡らした紙とフタの開け閉めで湿度調整。

棚を網棚にして下の段に水草などを入れたプールを置いたりして湿度をあげる工夫をします。

衣装ケースに水が入っています。ホテイアオイを入れておいたのですが枯れてしまいました。

この簡易ハウスは保湿にいいです。横はクワガタ飼育。

それでもダメな場合は以下の方法で強制的に培地に湿度を与えて発生を促しましょう。

霧吹き法

培地が乾燥気味で発生しない可能性があります。培地直接に霧吹きで水をふいたり、水をかけてあげましょう。数日後に芽がでてきたら大成功です。

水をかけます。

しばらく浸けてもOK。

浸水法

霧吹きより大胆に培地を水につけてしまいましょう。ビニール袋やペットボトルで栽培しているなら直接容器に注水してもかまいません。また、容器から培地を取り出してバケツなどに水をはって浸水してもOKです。浸水時間は培地にもよりますがだいたい10分から30分でよいと思います。培地の粒が大きいものは崩れやすので霧吹きか容器に直接注水の方がいいです。水を切った後は容器にもどして湿度を保つようにします。

表面を掻き出します。

そして浸水。

覆土法(オススメ)

培地の上に湿らせた土、鹿沼土、赤玉など培地がちょっと顔を覗かせる(1,2センチ)程度にふりかけてください。通常1週間前後で芽がでてきます。芽が出ても周りの環境が乾燥していればキノコの芽は大きく成長しません。覆土することにより、芽の間近で土から湿気があがってきますので成長にいい環境をつくりやすいです。

濡らした鹿沼土で培地を覆って保湿します。

袋の場合。

乾燥気味の場所ならビニールを閉じて対応。

埋土法(オススメ)

培地を容器から取り出し、土の中(または鹿沼土、赤玉)に埋めてしまいます。木陰などの発生環境のよいところに埋めるか、プランター等に埋め込みます。その上から散水します。こちらも1週間前後できのこの芽がでてきます。覆土法と同様、キノコの芽の成長によい環境がつくりやすいです。

プランター。

植木鉢。

温度調整方法

冬場、夏場とも室内ならば人間は春か秋の環境で生活しようと冷房、暖房を使用するものなので、湿度の条件さえ整えればキノコが発生してくる可能性が高いと思います。家庭ゴミを利用した少量の栽培なら部屋の片隅においてあげてください。中規模以上の栽培規模で自然下で栽培する場合は地域によっては、夏、冬は温度の調節が必要になるかもしれません。

栽培環境が高温の場合

とにかく涼しい場所を探しましょう。木陰、土間etc。それでダメなら工夫しましょう。30度を超してくるとヒマラヤヒラタケの発生は難しくなってくると思います。ウスヒラタケはヒマラヤヒラタケより発生温度が多少高そうなので夏場に発生時期を迎えそうな場合はウスヒラタケを選ぶといいかもしれません。また、まだ実物を見たこともないのですが高温に強そうなオオヒラタケ、クロアワビタケを是非ゼロエミ式で実験したいと思います。もし、ゼロエミ式に耐えられるような品種でしたらゼロエミ式の可能性はますます広がります。自然環境下で栽培するゼロエミ式では品種選びも重要です。その他のヒラタケ属のトキイロヒラタケ、タモギタケ、エリンギなども直感的にあまりよくないように感じますが、確認のために実験していきたいと思います。

温度を下げる方法

なかなか難しいですが、一応、参考までに二つ方法をあげておきます。「培養」のページでも紹介している方法になります。

冷蔵庫法

培養が完了したら冷蔵庫にいれてしまいましょう。条件等、現在実験中です。

トンネル法

手間がかかりますが、トンネルや穴を掘って発生場所にします。トンネル内は比較的涼しく湿度も高いです。

このように崖崩れを起こす危険があります。隣の家は傾き、ニュースになってひどい目に合いました。

プール法

衣装ケースなどに水を張り、その中に容器を沈めます(培地に浸水しない程度)。日陰において直射日光をさければ水温はいっても30度程度にはおさえられると思います。

栽培環境が低温の場合

ヒマラヤヒラタケの最低発生温度は8度あたりらしいのでなんとかそれ以上は確保したいです。日中に数時間でも8度に達すれば発生するのか、通日8度の培養でも発生するかなど、実験する環境、設備がないので、まだ自分にはヒマラヤヒラタケの特性がよくわかっていません。従って最低限の低温栽培環境を記すことができませんので、ここでは単純に基本的な保温方法をあげておきます。また、冬場にはヒラタケの中で低温に強い品種を選んで栽培するのもいいかもしれません。

保温に利用できそうな用品

簡易ビニールハウス

発泡スチロール

覆いかけ(ビニール、寒冷紗など)

キノコが出ました!収穫ページへ

https://inkinken.bio/manual/page-195/