原木栽培

ソーラーシェアリング型原木椎茸栽培

2023年に露地型栽培から営農型太陽光栽培方式に変更し、原木椎茸・原木ナメコ・原木キクラゲ等を栽培しています。

きのこの原木栽培とは

原木栽培とは、ナラやクヌギなどの広葉樹の原木にきのこの種菌を植え付けて、自然環境の中でじっくり育てる伝統的な栽培方法です。樹木を伐採して乾燥・玉切りし原木に加工し、ドリルで穴を開けて種菌(種駒など)を打ち込むことで菌を原木に定着させます。短く玉切りしてオガクズ種菌を塗る方法などもあります。原木を菌床栽培のように殺菌して行うこともあります。菌糸は原木の内部でゆっくりと増殖し、やがて気温や湿度の変化により自然発生します。収穫までは通常1〜2年かかりますが、菌床栽培とは違うきのこ本来の味、風味豊かな美味しいきのこが得られるのが魅力です。菌床栽培と比べると環境負荷も少なく初期投資もかかりませんが重労働で収量も少ないです。露地で旬の季節に収穫する方法とビニールハウスなどで加温して周年栽培する方法などあります。

原木栽培の基本工程(露地椎茸)

工程 内容
原木の準備 ナラ・クヌギなどの広葉樹を秋〜春に伐採し葉枯らし乾燥して玉切り(約1m)
植菌(種駒打ち) 電動ドリルで穴を開け、種駒を打ち込む
仮伏せ 横積みにして遮光・保湿し、菌糸を原木に活着させる(最高気温25度まで)
本伏せ 林内などに移動し、通風・湿度管理しながら菌糸を蔓延させる
発生・収穫 2夏経過後の秋〜春に発生。適期に収穫
休養・再発生 収穫後は休養させ、可能なら散水などで再発生を促す(3〜5年収穫可能)

原木栽培の基本工程(周年椎茸)

工程 内容
原木の調達 クヌギ・コナラなどの広葉樹を伐採し葉枯らし乾燥、長さ90〜100cmに玉切り、または購入
植菌(種駒打ち) ドリルで穴を開け、種(形成菌・おが菌)を入れる
仮伏せ 施設内で井桁積みにし、遮光・保湿しながら菌糸の活着を促す
本伏せ 積み替えて通風・湿度管理しながら菌糸を原木全体に蔓延させる(約6〜8ヶ月)
熟成・褐変 菌糸が木口まで到達し、褐色化することでホダ木が完成
浸水・水揚げ ホダ木を水槽に浸水し水揚げして発芽を促す
発生・収穫 芽が出たら約5〜7日で収穫。施設内で加温して通年発生が可能
休養・再発生 収穫後は30〜40日休養させ、再度浸水して発生を繰り返す(1本で2〜3年使用可能)

原木椎茸栽培のメリット

項目 内容
風味・香りが豊か 自然環境で育つため、菌床栽培よりも香りや旨味が強い
高級品として扱われる 乾燥品や肉厚品は贈答用や業務用で高単価で取引されることもある
低環境負荷 自然の原木と菌のみで育てるため、安心・安全な食材アピールができる
収穫期間が長い 1本の原木から3〜5年にわたり収穫可能
森林資源の循環利用 伐採→植菌→収穫→土に還るという持続可能なサイクル
地域資源の活用 山林や広葉樹を活かした地域活性化につなげることができる
ブランド化しやすい 「原木椎茸」として差別化でき、産地表示にも強み

原木栽培のデメリット

項目 内容
収穫まで時間がかかる 植菌から発生まで約1〜2年かかり、収益化に時間が必要
季節に左右される 春・秋の年2回しか収穫できず、通年供給が難しい
天候の影響を受けやすい 雨量や気温により発生量が変動し、安定生産が困難
労力がかかる 原木の運搬・積み込み作業が重労働で、高齢者には負担が大きい
品質のばらつき 自然環境で育つため、形やサイズに個体差が出やすい
害虫・病気のリスク 屋外栽培のため、キノコバエやナメクジなどの被害が出やすい
土地や林の確保が必要 林内や山間部など、適切な栽培場所の確保が必要

原木栽培の始め方

原木栽培は原木さえあれば1本からでも始められる手軽さがあり、家庭の庭先などでの栽培には菌床栽培よりも向いています。ただし、原木を自分で伐採したり、栽培する本数が増えてくると作業が非常に重労働になります。収益を目的とする場合、露地での原木栽培は初期コストを抑えられる一方で、原木の入手が困難であったり、適した栽培場所の確保が必要です。さらに、収穫は旬の時期に限られ、労力に対して収益性が低いのが課題です。年間を通して栽培したい場合は、ビニールハウスや浸水槽、加温設備などの導入が必要となり、設備投資によるコストが大きくなります。そのため、収益目的で安定した栽培を目指すなら、初期投資には補助金も活用できる菌床栽培の方がおすすめです。

原木椎茸栽培の方式比較

項目 露地栽培 周年栽培(施設栽培)
栽培場所 林内・庭先などの屋外 ビニールハウス・簡易施設など屋内
設備投資 ほぼ不要(原木・種駒・遮光資材程度) ハウス・浸水槽・加温設備などが必要
収穫時期 春・秋の年2回 通年(温度・湿度管理により調整可能)
収益性 低〜中(旬限定・単価は高め) 中〜高(安定供給・販路拡大しやすい)
作業負荷 原木運搬・積み込みなど重労働 施設内作業中心で軽作業が多い
管理の難易度 天候に左右されやすく経験が必要 温湿度管理が必要だがマニュアル化しやすい
補助金の活用 少ない(地域によっては林業系支援あり) 多い(施設整備・農業参入支援など)

原木生椎茸栽培の収益モデル(年間)

項目 内容 金額(目安)
収入 生シイタケ販売(年間1300kg × 1,000円/kg) 1,300,000円
支出 原木購入費(1000本 × 450円) 450,000円
支出 種菌費用(1000本 × 40個 × 5円) 200,000円
支出 光熱費・水道代(施設利用時) 100,000円
支出 資材・消耗品(遮光ネット・シートなど) 50,000円
支出 人件費(自営の場合は0円) 0〜300,000円
利益 年間純利益(収入 − 支出) 約200,000円〜500,000円
この収益モデルは「原木を購入する場合」の例ですが、自伐できる場合には原木費がほぼゼロとなり、利益率が大きく向上します。
収量の計算は、直径10cmの原木1本あたり約1,300gの生シイタケ収穫を想定していますが、栽培条件や品種によってこれ以下になる可能性もあります。また、販売単価は100gあたり100円の手取りを基準にしていますが、販路や品質によってより高単価で販売できれば、収益性をさらに高めることが可能です。なお、周年栽培の場合は、ビニールハウスや浸水槽、加温設備などの導入費用や光熱費が継続的に発生するため、慎重なコスト計算と資金計画が不可欠です。設備投資と運用コストを正しく見積もることが、事業の持続性と収益確保の鍵となります。
原木椎茸栽培の問題点

生産者の高齢化と後継者不足
原木栽培は重労働で体力を要するため、高齢の生産者が離農し、若手の担い手が不足しています。

原木の供給不安定化
クヌギ・コナラなどの広葉樹の伐採制限や森林管理の衰退やナラ枯れで原木の安定供給が困難になっています。

異常気象の影響
猛暑・豪雨・暖冬などの気候変動により、発生不良や品質劣化が起こりやすく、収穫量が安定しません。

獣害問題
鹿、猪、猿が木やきのこを荒らします。

収益性の低下と菌床栽培への移行
手間がかかる割に単価が安く、収益が見合わないため、菌床栽培へ転換する生産者が増えています。

設備投資の難しさ(周年栽培)
通年栽培を目指す場合、ビニールハウスや浸水槽、加温設備などの導入が必要で、コストが高くなります。

原木の価格高騰と入手困難
原木の大産地だった福島が原発被害を受け、原木の流通量が減少し、価格が上昇。特に都市部では仕入れが難しくなっています。

害虫・病気のリスク
屋外栽培のため、キノコバエやナメクジ、病原菌などの被害が出やすく、品質管理が難しいです。

廃ホダ木の供給減による波及影響
昆虫飼育(クワガタなど)に使われる産卵木としての廃ホダ木が不足し、関連市場にも影響が出ています。

国内しいたけ生産量と栽培方法別シェア(令和4年)

品目 総生産量 菌床栽培 原木栽培 菌床シェア 原木シェア
生しいたけ 69,532t 約65,200t 約4,300t 約93.8% 約6.2%
乾燥しいたけ 2,034t 推定 約20〜40t 約1,990〜2,010t 推定 1〜2% 推定 98%以上
総論

原木椎茸といっても百色あります。周年栽培で使う品種は寒い時期に自然に出る品種と比べて美味しくないです。消費者は「原木椎茸」のラベルで購入を決め、品種のことはわからないのでそこまで気にすることはないですがほんとに美味しい原木の生椎茸を作りたければ周年菌でなく冬菌を選ぶべきです。ただ冬菌は周年菌のように浸水してもまばらに発生するので収穫の手間がかかるのと旬しか収穫できないので年間を通した収入が見込めません。要するに周年菌にしても冬菌にしても収益目的なら菌床栽培を選ぶべきです。現在の原木栽培のシェアがそれを物語っています。