ゼロエミ式キノコ栽培マニュアル

キノコ種菌の作り方

ゼロエミ式無菌作業

まず、この無菌作業を学び、習得せずには種菌の生産などできません。種菌に雑菌は混入していないのがベストです。そのために無菌作業が必要になってきます。


ゼロエミ式キノコ栽培は簡単簡易、誰にでもできるものですが、種菌の生産はちょっと違います。知識、技術、設備などが必要です。

もちろん、ゼロエミ式栽培のための種菌を生産をする目的(研究室で通用する技術や販売目的ではありません)ですので、基本の4L(ローコスト、ローエネルギー、ローテクニック、ロー環境ダメージ)に近づけるため、できるところは極限まで努力、工夫をしていますが(無殺菌・簡易殺菌種菌・子実体をそのまま利用等)、種菌生産のゼロエミ達成指数は栽培とは比べ物にならないくらい低いです。

この無菌作業は慣れてしまえば簡単ですが、マニュアルを読んだだけですぐにできるというようなローテクニックなものでもありません。大学や研究室のような設備の整った所でするのならちょっと教えてもらえばキノコの菌を扱うくらいならすぐに誰でもできるようになると思いますが、ここで対象としているのはそのような設備の導入できないところや家庭での種菌生産です。

そこらへんにあるものを利用してなんとか安く、簡単に良質の種菌を生産しようする試みです。なんでも設備、器具の揃った大学、研究室でやるより、ある意味テクニックが必要で断然に難しいのです。

本来の無菌作業

まずは通常の無菌作業とはどういうものか見てみましょう。

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見てわかるとおり、設備を導入するれば完璧な作業はできるものの、本格的な無菌作業を行うには設備投資に莫大に費用がかかります。


ゼロエミ式無菌作業(自作クリーンベンチ・無菌箱等)

無菌は無理ですと断言したくはありませんが、成功率100%は厳しいかもしれません。限りなく無に近づける努力、工夫をしてなんとか「少菌」にして、あとはテクニックでカバーします。作業が成功するかしないかは作業をする場所の環境つくり(雑菌量)にかかってます。そして、作業技術です。

最適な作業環境づくり

高性能のクリーンベンチ(無菌箱)があれば問題ないのですが、家や貧困地区でのプロジェクトなど高価なクリーンベンチを導入できない所では、なんとかそれにかわる代用品を工夫しなくてはいけません。

使ってないトイレ(クリーンルーム?)に設置した簡易クリーンベンチ(簡易無菌箱)
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これはアクリル板を買ってきて自作したコロンビアのNGOで使用していた簡易無菌箱です。上と横を開くようにしてあります。作業前は器具等は上からいれ、アルコール消毒をして密閉、作業途中に必要になったものは横を最小限にあけてなるべく外気をいれないようにして取り込みます。扱う容器の大きさが決まっていたので、なるべく空間をつくらないのように低めにつくって、作業は上から覗いて行うようにしました。腕をカバーする部分は材質がゴワゴワで使いにくかったです。ただ丸い穴をあけて、そこに台所の流しのゴムのフタのようなものを取り付けてそこから手を入れるようにした方が便利だったかもと思っています。内部の消毒はとにかくアルコールです。アルコールランプはもちろん使用できないので白金耳やスプン、ピンセットなどの直接菌糸に触れるものは最初に火炎滅菌して複数用意し使用していました。足りなくなった場合は仕方ないので外で火炎消毒です。作業なれすればアルコール量も少なくてすむと思いますが、現地ではいままで一度も菌を扱ったことのない同僚に種菌生産を教えまかしていたので、最初のうちは、とにかくこまめにアルコール消毒!と指示して作業をしてもらっていました。設置場所がなんと狭いトイレ!だったので作業終了すると二人とも酔ってヘロヘロでした。便座の椅子は座り心地最高でした。大きな失敗は一度もなく種菌を生産し自家用また販売もしていました。

水槽利用
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現在はこれを使っています。横90センチ×高さ45センチ×奥行き45センチのアクリル水槽です。5000円くらいだったでしょうか?随分、水槽も安くなりました、自分が中学のころ28000円はしました!。一番簡単な使い方はその水槽を横置きにしての使用です。それですと前面が全開ですが、上と横が塞がれていればあとは作業テクニックでなんとかなります。自分は前面にプラスチック板を加工して貼り付けて2枚扉式にしています。ちょっと使いにくいところがあって改良しなければならないのですが面倒くさくてそのまま使用しています。作業方法は上の自作箱に準じています。注意点は水槽の大きさです。横は扱う量がすくなければ小さい水槽でも構いませんが、問題は奥行きです。(横にして使うので奥行きが無菌箱の高さになります)45センチは上から覗き込むには高く、前から覗きこむには低いです(自分の椅子の場合)。もし、購入する場合はシュミレーションしてからにしましょう。

簡易ビニールハウス
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これは近所のホームセンターで見つけたのですがかなり使えそうな気がします。いらない時はバラせるし、持ち運びもラク。高さがあるので中でアルコールランプも使えると思います。前面のビニールをどう加工するかだけです。もちろんこれを真似たものをパイプなどで組んで自作するのもアリです。ただ自作の方が高くついてしまうような気がしますが。はやくこれに気がつけばよかったです。

ダンボール、衣装ケース

ちょっと貧乏くさい感じがしますが、これでも十分できます。横と上がふさがっていますので基本的には水槽をただ横に並べて使うのとかわりません。ただ、ダンボールは納豆の入っていたものなどは気持ち的にお勧めしません。衣装ケースは水洗いやアルコールで拭けるのが利点ですが、奥行きが深いものがいいと思います。

衝立て

上は開きますが左右はなんとがブロックできます。何もないよりかはましです。

風呂場

結構いいです。作業前にお湯シャワーを出し、蒸気で空中浮遊菌をキャッチし落下させてしまいましょう。蒸気が落ち着いたら作業開始です。作業前にシャワーを浴びれば清潔にもなります。問題なければそのまま裸で作業してしまいましょう。

発展型

箱ものには、HEPAフィルター付きの空気清浄機を取り付けたり、ゴム手袋を接続したり等、自分なりの「自作クリーンベンチ・無菌箱」を製作しましょう。


作業時の注意点

作業前

清潔な服装 手洗い アルコール消毒

まず、作業前は必ず石鹸で手を洗いましょう。あれば薬用石鹸、オスバン。服装はなるべく清潔なもの。できたらシャワーを浴びてそのまま裸で作業しましょう。ふざけているようですが一番清潔です。直前は肘から先をアルコールで消毒します。また、必要器具、用品をアルコール消毒し作業場に配置します。簡易無菌箱での作業の場合は内部にアルコールを噴霧して雑菌数を減らします。

作業中

簡易的な設備ほどほど間違いなく雑菌は多いです。空中に浮遊しています。また落下した菌はそこら中に付着しています。作業は見えない菌との戦いです。見えない菌を感じながら作業しましょう。具体的には、空気を動かさないようになるべく静かに作業する、無菌を保たねばならない培地は容器の開閉をすばやく作業する、またできたら容器の口は落下してくる菌が混入しないよう横、または下向きにして作業する、菌糸に直接触れる器具の部分は他の場所に直接接触させない、こまめにアルコール消毒、火炎滅菌をするなどです。

作業後

使用した器具を洗い、散乱した菌糸クズなどをふき取り作業場を清潔にしておきます。


見えない菌を見る

菌の侵入口を絶えず下に向ける、侵入口を空ける時間をなるべく減らす素早い作業など、テクニックさえ身に着ければ、簡易無菌箱などなくともアルコールランプ1個でキノコの菌くらいなら扱えるようになりますが、成功率をUPさせるには、最初は身近なものを利用して簡易クリーンベンチをつくった方がいいと思います。

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このゼロエミ式無菌作業方法に慣れて、次ページの種菌生産工程へ

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