抑菌・殺菌(石灰処理)

ゼロエミ式キノコ栽培マニュアル

 

ゼロエミ式キノコ栽培工程

 抑菌・殺菌(石灰処理)

便宜上、培地殺菌と言っていますが、ゼロエミ式では通常の菌床栽培で行うような高温による培地殺菌はしません。培地殺菌というよりも培地調整(石灰水処理)もしくは抑菌と呼んだ方が近いと思います。


菌床栽培の培地殺菌法とゼロエミ式殺菌法の違い

両者の違いを理解するため、まずは菌床栽培の殺菌方法を確認します。

    • 菌床栽培の培地殺菌

菌床栽培では、キノコの菌糸のみを培地上で培養するため、キノコの菌を接種する前に完璧に培地を殺菌します。

■高圧殺菌

高圧殺菌釜(圧力鍋の大きいもの)で120度で30分殺菌

■常圧殺菌

蒸気釜で98度で4から6時間殺菌

これらの方法できっちりと培地を殺菌すると培地上に雑菌はいなくなります。この方法によって殺菌した栄養のある培地にキノコの菌糸のみを植えつけると菌糸はスクスクと生長しいっぱいキノコを出します。競争相手のいないところでおいしい食事をひとり占めにできるからです。ただ、培地は無殺菌無抵抗状態になりますので、その後、雑菌が混入するとあっという間にコンタミしてしまいます。

【参考サイト】

【技術分類】1-2-3 基本栽培方法/菌床栽培/殺菌工程

  • ゼロエミ式の基本的な殺菌方法

一方、ゼロエミ式の殺菌は殺菌と呼べるようなものではありません。抑菌と呼ぶ方がふさわしいようにおもいます。培地を石灰水に3日から7日間浸水させるだけです。科学的にこの方法を検証したことはないので、これになんの意味があるのかと質問されても回答に困るのですが、とりあえずここでは、この方法でキノコが出ている事実に重きをおいて、検証は宿題、機会があったらやってみようと思っています。

(追記)

検証実験 - 石灰水によるキノコ栽培培地のpH変化を観察

 2009年07月22日のブログ|

両者の比較

    • 菌床栽培殺菌法(高温殺菌)

◎ 雑菌を排除し培地をキノコ菌糸のみ育てられる。栄養のある培地が使えるのでキノコの生長がはやい。収量があがる。きっちりやれば成功率は100パーセント近い。

× 多大のエネルギーを消費する。作業が面倒くさい。培地が無菌無抵抗なため管理をきっちりしないとすぐ雑菌にやられる。

    • ゼロエミ式殺菌法

◎ エネルギーを使わない。作業が簡単。管理も簡単。

× 失敗することもある。

まとめ

通常の菌床栽培できのこ栽培は商売目的です。売れる商品を計画通り、計算通りにつくり儲けるのが最大の目的目標です。その目的のためにはCo2も排出しますし(しない努力はしていると思いますが…)、設備投資、ランニングコストもかけます。培地も廃棄物の有効利用なんて考えていられません(多少は考えていると思いますが…)。もっとも効率のよい培地を研究し使用します。トータルで儲けがでる栽培設計をしなければ生活が成り立たなくなるだけです。

一方、ゼロエミ式栽培の目的、目標はキノコの収穫にのみならず、廃棄物の有効活用+環境に優しい栽培を目指しているので、切り捨てる(諦める)ところは切り捨て(諦め)なければならないことがあります。

ゼロエミ式で使っている培地も、通常の菌床栽培の方法(高温殺菌)で栽培すればより収量が上がる栽培ができることが多いです。ただ、その収量UPを目指すが故に高温殺菌を導入しエネルギー多大に消費してしまっては、本末転倒、ゼロエミ栽培の理念に反してしまいます。多少、収量減は、Co2を排出しない、栽培コストがかからないなどのプラス面で十分、相殺できます。

どちらの栽培法が優れている、劣っているということではなく、両者の栽培目的目標が根本的に違うということです。


ゼロエミ式抑菌・殺菌工程

色々な方法がありますが、基本的なゼロエミ式培地殺菌工程は以下のようになっています。

■1.培地を消石灰水に浸水 ⇒ 2.数日放置 ⇒ 3.培地の水切り

必要品

 

水道水、雨水、川水を使用します。雨水を使うと環境満足度がUPします。いい雨水タンクが売っています。自分でも作れますし、自治体で補助を出しているところもあります。雨水はもっと色々と利用するべきです。

 

    • 消石灰

 

水1リットルに消石灰2.5グラムから5グラム程度使用(25度の水1リットルで1.6グラムが溶ける限界のようです。このくらいで十分なのかもしれません)。これは購入しています。ホームセンターで20キロ400円ちょっとでしょうか。100円ショップでも売っています。消石灰の代わりになるモノ、天然の消石灰岩みたいなのがあればいいのですがその方面は門外漢なので今後の課題です。

 天然牡蠣がら

 

    • 浸水容器

培地を浸水させるスペースさえあればなんでも使えます。

■ゴミバケツ、漬物入れ、ペットボトル、衣装ケース、ビニール袋、カップ焼きそば容器等

扱う培地量や栽培工程設計により色々工夫してください。継続的に栽培したい方はバケツに水切り用の蛇口を取り付けると作業が簡単になります。

 

家庭でちょくちょく栽培する人は10リットルから20リットルの水タンクを細工して使うと便利です。石油用ポリタンクでもOKです。ホームセンターで発酵バケツが売っています。蛇口もついており加工の必要がないのでこれがベストです。

また、浸水容器と栽培容器(換気口も)を一括化した容器を工夫して作成することもできると思います。要は工夫です。 大規模にやる場合は浸水用タンクを作ると便利です。

    • 重石

沈めた袋(培地)の浮力に負けないものならなんでもいいです。漬物石、ブロック等。 継続的に栽培する方はつっかえ棒等を工夫すると便利です。

    • 培地入れ袋

密閉されていない袋を使います。培地を水から引き上げた時、水がよく切れて、なるべく外気に触れないような(そんなに神経質になる必要もないですが)袋がいいです。自分はガラ袋を利用しています。ただガラ袋だと吊り下げて水を切る場合、ちょっと水が切りにくいかもしれません。その場合、袋の下部に穴をあけるとか工夫してください。培地が少量の場合は、キッチンの三角コーナーの網目袋などが利用できます。

 

(ちょっと工夫)

穴を開けたビニール袋に培地を入れて、直接浸水容器に漬けてしまします。排水と同時に水が切れます。水を切ったあとそのまま接種します。水切りが容易な培地を使用する際、かなりの省力になります。ちょっと袋がくさくなって、汚れてきたならしくなるのが欠点です。これは工夫の一例ですが、このように自分の栽培環境に合った「簡素化」をすると仕事量を減らすことができます。

■栽培袋をそのまま石灰水処理

 

    • 水切り機

吊り下げるだけで水がよく切れる培地は問題ありませんが、浸水させるとよく水を含み吊るしただけで水が切りきれない培地は圧力をかけて水を絞りださなければいけません。目安は培地を強く握って水がちょろっと滴り落ちるくらいがいいです(培地種類にもよりますが)ビニール袋数袋の栽培規模でしたら手で押しつぶしたり絞ったりして水を切ればよいですが、栽培規模が大きくなると水切り機を導入しないと結構大変です。日本では野菜絞り機として販売されているものが手頃だと思います。使わない洗濯機で脱水することもできます。

■野菜絞り機(日本製既製品)

■水切り機(コロンビア自作)


工程詳細

石灰水浸水法

培地をキノコの菌がよく伸びるような適正水分率に仕上げるのは結構、面倒くさいです。通常の菌床栽培のオガクズ培地(オガクズ+米糠等)なら水分率を60~65%に調整しますが、きちんとやろうとすれば、各材料の混合比率を決め、水分率を出して加える水の量を計算したりしなければならず、算数の苦手な自分には至難の業です(計算ソフト使いますが…)。だいたい手でギュッと握って水がじわりと出るくらいがいいと言われています。この石灰水浸水法では水分率の調整をせずに「水切り」をすることによって適正水分率に近づけます。 培地に排水するだけで適正水分率になるものありますし、絞ったり、圧力をかけて水を切って使うものもあります。

    1. 培地を消石灰水に浸水

消石灰水は水1リットルに対し消石灰2.5グラムから5グラムを混合(25度の水1リットルで1.6グラムが溶ける限界のようです。このくらいで十分なのかもしれません)。目分量で問題ありません。水が白くなればOK。あまり薄くなくあまり濃くない白くらいがちょうどよいです。

 

    1. 放置

放置期間は3日から7日くらい。それ以上放置する培地にもよりますが悪臭がかなりきついです。浸水した次の日、水分量を確認。吸収のよい培地は水が減っていることが多いです。完全に浸水させるようにしましょう。

 

  1. 培地の水切り

重要な工程です。培地を取り出し、吊り下げるか押しつぶすか(あれば水切り機)して水をよくきります。培地の水分量が多いとキノコの菌糸は伸びません。培地の特性(保水力)により、水切り方法を決めます。水切り後、培地を栽培容器に詰めていきます。

以下の方法があります。

■水切り機

■押しつぶし法

■吊り下げ法

読んで字のごとく吊り下げて水を切る方法です。培地によってすぐ切れるもの、一晩程度かかるものなどありますので、状態をみて水切り時間を決めます。また、培地を入れる袋の種類によってもかわってきます。適度な培地の水分含有量は培地の種類、大きさなどにより異なります。培地を握ってボタボタ水が垂れない程度まで水が切れればいいと思います。

吊り下げ法では培地によっては水が切りきれなく、しばらくすると詰め込み容器の下に水がたまってくることがあります。もし、水がたまるようでしたら、ビニールの場合は下部の端を切って水を抜いてください。抜いた後は洗濯バサミ等でふさいだ方が虫などの侵入がふさげます。

■手絞り法

これも読んで字のごとく浸水培地を手で水を絞り出す方法です。あまり培地が多いと大変ですが、少量の場合はこの方法が手っ取り早いです。培地を手でぎゅうと絞ってもいいですし、網目状の袋に入れて押しつぶして絞りだしても構いません。培地を手で直接触れることには抵抗感(雑菌混入の恐れ)が前はありましたが、ほとんど問題ないようです。コロンビアでは袋に入れた培地を地面に置いてトラックのタイヤで踏み潰して水切りをしているところもありました。それでいてコンタミ(雑菌にやられること)もせずにキノコが出ていたのですからたいしたものです。このいい加減さからヒントを得ることが多かったです。さほど気にする必要はないと思います。

こんなの(お新香作り機?)も水切りに利用できるかもしれません。

以上が基本的な工程になりますが、水の切りやすい培地を使用する場合には、水切り→容器に培地詰めという2工程をひとつにまとめて省力化が可能です。

※浸水行程省力化法(水切りのよい培地)

■ペットボトルで一括化

ペットボトルに培地を入れて石灰水浸水をします。その後、下部のキャップから水抜きをします。水抜きの後、そのまま植菌をして培養ですので、培地の移し替えなどの手間が省けます。家で栽培する場合は手軽に出来るお勧めの方法です。注意点はキャップをしっかり締めること。締めないと水がジワジワと漏れてくることがあります。また、流れやすい(粒の細かい)培地の場合はボトル口にキッチンネットなどを詰め込んから培地を入れます。浸水翌日に培地が水を吸収して培地が露出している場合は石灰水を継ぎ足した方がいいです。

 

材料が浮いてこないようにこんな工夫をしたり、

流れ出ないようにこんな工夫をしたりします。

この商品(ペットボトル茶漉し)はとても使えそうだったので購入しました。使えそうな感じでした。

■ビニール袋で一括化

上記の方法と同じ原理です。浸水完了後はビニール袋の端をカットして廃水します。水が残っているようでしたら、上から手で押して絞り出します。

カットだけだと粒の小さいもは流れ出してしまうので、こんな加工もしてキャップ内にフィルター入れて試しましたが作るのが面倒でした…

■バケツ等を加工して一括化

場所があれば衣装ケースくらいの箱やバケツに蛇口を取り付け、培地詰め→浸水→排水→接種の工程を一括化できるものを製作して栽培も可能です。中規模から大規模に栽培する場合は導入すると作業工程が簡素化すると思います。

方法(具体例)

自分は家庭用40リットルゴミバケツを使用しています。バケツに水を半分入れて消石灰一握り(100グラムから200グラムくらい?)をとかします。そこに培地を入れたガラ袋を沈めます。ガラ袋が浮かないようにブロックを上にのせます。培地が完全に浸水するまで水をいれかきまぜて、フタをして完了です。あとは3日から7日間放置です。その後、バケツをひっくり返して廃水します。培地の入ったガラ袋を水切り機で水を切ってから(水の切りやすい培地は吊ってから)ビニール袋につめて接種作業にはいります。

石灰混合法

含水率の高い材料を使う場合や水切りが面倒な場合などは、材料に直接、消石灰を混ぜても可能なものもあります。その場合も材料の水分率を考慮する必要があります。少し乾燥させるなどしてから消石灰を混ぜる等の工夫をします。

煮沸法

材料を煮て殺菌します。煮た後に湯切りをして使います。鍋に材料と水を入れてフタをして30分~60分煮沸しました。その後、ひっくり返して一晩置いてフタの隙間からお湯を切ってから使いました。すぐに水分が切れる材料なら熱いまま栽培容器に詰め替えた方が雑菌にやられる可能性は少なくなります。完璧な殺菌はできませんが、ゼロエミ式で使用する培地(残渣など)は一気にカビなどが蔓延するほど栄養分の高いものを使わないので、この殺菌方法でもうまくいきます。多くの国で導入されている方法です。

太陽熱利用法

低温殺菌法  パスチャライゼーション – Wikipediaを太陽熱を利用して実用化しようとしています。黒く塗ったペットボトルに入れてもかなり温度はあがるのでベランダでもいけるかもしれません。今後、試していきたい方法です。


培地の使い方(まとめ)

そのまま使おう!

廃棄物は様々な形で排出されてきます。たとえばジャガイモの皮にしても、家庭ではお母さんが手でむいてヒョロヒョロと細長い皮の状態でゴミとなりますが、大きなレストランや工場なら専用のジャガイモ剥き機を使用しているので、もっと細かい皮の粒になって排出されてきます。同じジャガイモの皮ですが状態(大きさ)が違い、栽培した時の結果も変わってきます。

基本的には培地は、細かい方(微細はダメ)がいいです。ただ、細かくすればキノコがよく出るからといって、何時間もかけて潰したり、刻んだりするのは結構大変です。そのあたりの匙加減は各人で工夫してください。まずは排出されたままの形で試してみて、結果を見てから柔軟に対応することです。

水を切れ!

ゼロエミ式では培地は石灰浸水工程→水切りという工程で培地は処理され、種菌が植え付けられます。この水切りの工程が非常に大切です。あまりにも培地に水が残ってぐちゃぐちゃだとキノコは生長できません。もちろん乾きすぎもダメです。キノコが一番生長しやすい水分率にいかに近づけるかが成功のカギのにとつです。

つまり廃棄物の形によって水の切り方をかえなければいけません。先のジャガイモではお母さんのジャガイモ皮は水きり機や手でがんばって絞らなくても、吊るしておけば 水がさっと切れていい状態になると思います。一方、ジャガイモ剥き機の皮は粒が細かいため、吊るしておいても水はなかなか切れなくていつまでも ぐちゃぐちゃです。こんな状態でキノコの菌を植えてもなかなか生長してくれません。なんとか水を絞りだしてやらなければいけません。それが無理そうならただ単に石灰を混ぜるという方法を試してもいいかもしれません。

経験を積めば感覚でわかってきます。ゼロエミ式は非常にアナログな栽培方法です。計算どおりにはいきません。アナログは難しいです。でも楽しいです。色々、工夫する余地がいっぱいあります。


培地の殺菌ができたら以下のページへ。

 ゼロエミ式キノコ栽培マニュアル(植菌)

Posted by inkinken