植菌(接種)

ゼロエミ式キノコ栽培マニュアル

ゼロエミ式キノコ栽培工程

 植菌(接種)

石灰水処理(その他の抑菌・殺菌処理)が終わり水切りした培地を容器に詰めてキノコの菌糸(種菌)を植え付けます。


菌床栽培の接種方法とゼロエミ式接種方法

通常の菌床栽培接種作業条件とゼロエミ式接種作業条件を比較のため簡単に表にしてみました。

両者の比較

この接種作業方法は菌床栽培とゼロエミ式では180度違います。

    • 菌床栽培の接種

 

通常の菌床キノコ栽培で一番気を使うのがこの接種作業です。ここで雑菌が混入してしまっては全てがパーです。全ての条件を完璧にして作業にあたります。手を消毒し、作業前は清潔な服に着替えクリーンベンチ、クリーンルームでアルコールやアルコールランプ、ガスバーナーを使用して接種します。

    • ゼロエミ式接種

 

一方、ゼロエミ式では上の表のように通常の方法から見ればいい加減この上ない方法で接種作業を行います。技術が必要とされる菌床栽培の接種作業と違い、いい加減な作業でもOK、誰にでもできるのがゼロエミ式の特長です。普通の洋服で普通の部屋、または外で接種作業を行います。できれば作業前に手くらいは洗います。もちろん、本来一番気を使わなければならない接種作業をいい加減な方法で行うのですからコンタミ(雑菌混入)することもあります。ただ、今までの経験だとコンタミの理由は接種作業のいい加減さが原因ではなく、培地の水切り不足で水分量が多いとか、培地が栄養が多すぎるとか他の要因に起因することが多いです。


ゼロエミ式接種工程

接種方法

  • 個別接種方式
  • 培地混合方式
  • 重層方式
  • 一体型方式

培地の詰め方

培地の詰め方は、培地種類と容器の種類により千差万別なのでここで説明することは不可能です。経験を積めばどのように詰めればよいか感覚的にわかってきます。基本はフカフカ過ぎず、キツキツ過ぎず…培地量を確保しつつ培地全体に空気がまわるイメージで…詰める際は素手が基本です。手で直接、培地を触わって詰めることによりわかってくることが多くあります。培地水分率を計算して培地調整をする菌床栽培とは違うので、手の感覚によって学んだことを次回の栽培につなげていくことが重要になります。もちろん、モノにした培地なら、詰め込み作業が楽になる方法を工夫していくことはとっても大切なことです。

作業前

手洗いくらいはできればした方がいいと思います。アルコール消毒などは必要ありません。

作業場所

場所も清潔な場所でやる方がよいです(普通の場所でも、まず問題はありません) 。

容器種類別

基本的に培地が入ればなんでも利用できますが、容器により使い勝手等、様々です。

各種ビニール袋(一番お手軽)

透明のビニール袋が中の菌糸の伸び具合、雑菌の混入具合が見えて便利ですが、白、黒の袋でもかまいません。ただ、培養場所の温度が高いところで黒の袋を使うとムレると思います。スーパーの袋をリサイクル使用も可能です。傘袋なども面白いと思います。

【詰め方】

培地の粒の大きいものはそのまま袋にいれるだけどOKです。粒の小さいもの少しきつめに詰めます。培地に棒で穴を通して種菌の挿入口と換気口を作るとよいです。

ガラスビン

ガラスビンも透明、色つきとも利用可能です。何度も再利用できるのが利点ですが、大量に栽培する場合は洗浄等が手間です。また、ゼロエミ式で使用する培地は培地量に対して発生量が多くはないので500CCくらいのビンだとキノコがあまり発生しないかもしれません。きっちり詰めないと隙間にキノコが発生するので、粒の大きい培地は向きません。キノコの発生はビン口からになります。

【詰め方】

注意点は、培地をビン詰める前によく水切りをすること(あとから下に溜まっても排水しにくいので)。そして、培地をよく詰め込むこと(スカスカだとビン口でなく、横からキノコが発生することがあります)です。できれば詰め込み後、培地の真ん中を箸などの棒で突き刺して穴をあけ、その中に種菌を入れると菌糸の伸びもよくなります。

ペットボトル

基本はガラスビンに準じますが、加工ができるところがガラスビンと違うところです。色々な工夫ができて楽しいです。ただ、加工の仕方によっては1回きりの利用でゴミいきとなってしまいますので、再利用の効く加工方法を思いつくと満足度UPです。加工やカットをしないで使うのは詰め込みがしにくく不便です。培地の特性(大きさ等)により加工方法はかわってきますので各自工夫してください。広口ビンと違い、加工の仕方によっては、培養完了後、培地を取り出すこともできます。

→ ブログにペットボトルを使った実験を多くUPしています。

【詰め方】

加工方法、培地の種類により培地の詰め具合、接種方法がかわってきますので一概に説明することはできません。ベストはよく培地を詰め込んだ上で、種菌を培地に万遍なく混ぜるようにすることです。

その他

バケツ、ガラ袋、衣装ケース、ダンボール、特製栽培箱等


個別接種方式詳細

水を切った培地を容器に詰めます。そこにキノコの種菌を入れていきます。培地1000cc(または1キロ)にスプンの大匙1杯(できたら2杯)くらでいいと思います。種菌はいっぱい入れた方がいいですが、あまりどっさり入れるともったいないです。培地の粒の大きさ、容器によって方法がかわります。基本は培地全体に種菌をいきわたらせるようにすることです。

培地サイズ別

培地の粒が大きい場合(トウモロコシの芯など)

上から種菌をふりかけて容器を振って、種菌を培地全体にいきわたらせるようにします。簡単に種菌がいきわたると思います。逆に下の方に種菌がたまりやすいのでうまく調節してください。容器がビニール袋なら口を手で閉じて振ってください。培地が飛びださないようにするのはもちろんですが多少は雑菌の混入がおさえられます(あまり気にする必要もないのですが、一応)

培地の粒が細かい場合(コーヒー粕など)

こちらは容器を振ってもなかなかうまくいきわたらないことが多いです。自分は面倒なのでちょっと振った程度で培養してしまいますが、理想はよく混合することです。面倒でなければ、培地詰めの際、押し固めた培地に穴をあけるなどして種菌のいきわたりをよくします。

容器種類別

ビニール袋

扱いやすいです。培地を適量詰めて上から種菌をいれるだけ。入れてから袋を振って種菌をまぶします。作業はなるべく迅速、ビニールの口が開いている時間をなるべく少なくしたほうがいいです。置いてある時は口を折っておく、接種したらまた折っておくなどを心かけましょう(複数袋同時に接種する場合)。手で持ち上げられないような容器の場合、上から種菌をふりかけるか培地の粒が小さい場合は穴をあけて接種します。

広口ビン

基本的にビンを使うのは嫌いです。なぜなら通常の菌床栽培の培地のようにオガクズ+栄養材という培地ならビンにきっちり詰まり問題ないのですが、ゼロエミ式の培地は粒の大きいものが多く、そのためビンの口からでなく横から(ビンの内部)発生してしまい収穫に困ることがあります。培養完了後の培地を取り出して発生処理をかけることもできません。培地の粒が大きいものはなるべくビンは使わないほうがよいと思います。粒の小さいものはビンでも可能だと思います。接種は培地の真ん中に穴をあけてそこに種菌をいれてください。培地上部も種菌で埋めましょう。ただ、ゼロエミ式で使用する培地は培地量に対する発生量が少ないので500ccくらいのビンではあまりキノコはでないかもしれません。

ペットボトル

接種方法は広口ビンに準じます。カットした面、また、キャップ口から接種もできます。

その他

バケツ、ガラ袋、衣装ケース、ダンボール、特製栽培箱等


培地混合方式詳細

もっともゼロエミ式らしい接種方法です。成功例を腐るほどみていますし、自分でやって成功もしていますが、ちょっと大量に栽培する際は勇気がなくてなかなか手を出せない方法です。発展させなければならない方法なんですが…

培地をテーブルの上や大きな箱のなかに広げ、その上に種菌をぶちまけます。その後、よく培地と種菌が混合するように手で混ぜ合わせます。混合後はその種菌混じりの培地を容器に詰め込んでいって完了です。簡単です。

なかなか恐ろしい方法です。通常の菌床栽培しか経験のなかった自分は種菌を手掴みするなんて神に盾突く所業に思い、当初はこわくてこのこの方法には手を出せませんでした。どうしてもアルコールとアルコールランプ、薬匙を使いたくなります。なんたって種菌に直接手をふれるわけですから。しかし、超簡単な方法です。個別接種法と違い、培地に万遍なく種菌がいきわたるので菌糸の伸び具合も良好です。また、ちょっと大きな規模でやる場合にはかなりの省力になります。ただ、失敗するとそのロット全滅する可能性もあります。(この方法でやってまだ全滅させたことはありませんが)培地の総合ポイントが高いものはちょっと怖い方法かもしれません。ポイントが低い培地(培地ページ参照)の場合は大丈夫だと思います。ただ、色々検証して発展させるべき接種方法であることは間違いないです。

重層方式詳細

ちょっと面倒ですが、培地を少し詰めて接種、また詰めて接種と数回繰り返して詰めながら接種する方法です。二人一組でやる場合などに向いています。傘袋のような長い袋や2リットルのペットボトルを使う場合にもいい方法です。菌糸の伸びもよく、ちょっと面倒ですが、培地混合式より怖さのない方法です。

一体型方式詳細

水切れのよい培地には最も効率的な方法です。石灰水浸水容器をそのまま栽培容器として使用します。石灰水浸水が終わった後、排水して、容器から出さずに接種します。詰め込みの手間が省け、詰め込み作業がないことで外気に晒される時間が短縮しコンタミ率が下がると思われます。

培地をペットボトルで浸水→そのまま接種
⇒ ⇒

ペットボトル法の王道です。全工程をペットボトルで済まします。大好きです、この方法。現在、色々と実験中です。ゼロエミ式は雑菌との競争でもあるので菌が届くまでに時間のかかる下の方が雑菌に先にやられてしまう可能性があるので、接種後、ボトルを振って種菌をいきわたらせたり、培地に穴を空けて接種するなどの工夫をするといいです。

換気方法

キノコの菌糸が生長するには酸素が必要です。雑菌の混入を防ぎながら酸素を取り込むのが基本です。

ビニール袋の場合

キャップ方式

プラスチックの水道管などをカットしたものを袋に通し、新聞紙、コピー用紙などでフタをして輪ゴムや自転車のチューブを輪切りにしたものなどでとめます。綿でもよいです。丸めた新聞紙をただ突っ込んでとめるやり方もあります。

→ 詳細手順

◎ 雑菌の混入を比較的抑えられます。
栽培環境が乾燥気味のところでも比較的、培地からの水分の損失が少ないです。

× 面倒くさいです。フタにする紙の枚数、厚さの調節が難しいです。厚すぎると酸素がよく取り込まれず菌糸の伸びが悪くなります。薄すぎると雑菌が混入しやすく、また培地が乾燥しやすくなります。

小穴方式

ゼロエミ式らしい方法です。ビニール袋に直接、細棒、カッターなどで小穴を数個あけます。自分は1キロ詰め培地で10個くらいあけています。

◎ めちゃくちゃ簡単です。培地混合式と合わせれば無敵の簡単さです。栽培環境さえよければ(湿度、温度)通気がよいので菌糸の生長が早いです。ヒマラヤヒラタケはかなり酸素好きのようです。

× 培地が乾燥しやすいです。直接外気と触れるため、コンタミの可能性がキャップ式より高いと思います(そんなにかわらない感じなのですが…)種菌に殻粒培地を使うとネズミが穴から匂いを嗅ぎつけて寄ってきます。また、袋にぴったりと詰まる培地でないと隙間にコバエ等が侵入してえらいことになります。

丸メ方式

簡単に(きっちり閉じないで)袋口を軽く丸めたり、結んだりして閉じておくだけです。簡単にホチキスで止めてもいいです。一番簡単な方法なのですが、よく考えたらあまりこの方法実験したことがありません。今後、実験し報告します。

ペットボトル

方法はビニール袋の方法に準じますが、カットの仕方で換気方法が変わってきます。キャップを軽く閉めておくだけでもよいと思います。

その他の容器

基本は菌糸の生長に必要な酸素を取り込みながら、培地が乾かない、また、雑菌になるべくふれないようにする換気方法を工夫します。

心構と諦観

心構え

ゼロエミ式の接種作業はいい加減にやっても問題ありません。ただ、わざわざいい加減にやることはないです。

手を洗えるひとは洗ってください。石鹸のあるひとは石鹸を使ってください。アルコールやわざわざ清潔な服に着替える必要まではないと思いますができるならした方がいいです(ただそこまでするなら、接種場所等も無菌室に準じた場所にしないとあまり意味がないと思います。コロンビアのある団体では接種時、帽子 とマスクを着用するよう指導していましたが、接種場所の窓は開けっ放しの古い部屋でちょっと???でした)

作業時も、もし培地を袋に入れているなら、接種前は袋の上部を折りたたんで袋の口を閉じて置いておきましょう。接種時には最小限袋の口をあけ、そこから種菌をいれてあげましょう。そして完了したら、また袋の口をおりたたんで作業をつづけてください。種菌の容器もフタを開けている時は横にして落下菌がふりそ そぐのを少し防ぐなどの気遣いをしましょう。多少は成功率をあげてくれるかもしれません。

ただ、そんなことをしても結果はかわらないかもしれませんが、お金をかけないで、手間がかからなくてできることはするとよいと思います。

諦 観

以前、どこまでいい加減にできるか実験したことがあります。車がビュンビュン通る道路の脇で手も洗わず接種作業をしても問題なくキノコはでました。培地を入れるビニール袋もスーパーの使用済みのものを使いました。

そこから導きだした自分の結論は、一番大切なのは培地選びということです。次に水切り具合。ゼロエミ式に耐えられる培地は多少いい加減に接種しても耐えられるのです。どんなに慎重に接種作業を行ってもダメな培地はダメです。浸水法なんかで雑菌が完璧に殺菌されるわけもなく、もしされたとしても水切り作業時に雑菌は間違いなく混入します。そのような培地を使って無菌室で接種してもたいした意味はないと思っています。もちろん、雑菌は少ないにこしたことはありません。できる範囲で雑菌の混入を気をつければそれでいいと思います。

コンタミの原因を想像する

ゼロエミ式の接種作業は雑菌の混入を努力してまでさける必要なないと思っています(わざわざ雑菌をいれることもないのですが)。なぜなら培地上のキノコの菌と雑菌の間には共存関係、もしくは雑菌が、弱いキノコの菌に席を譲るような調和的環境が存在するように感じています。その調和的環境をゼロエミ式はうまくつくりだしているのではないか、もしかしたら、培地上にある程度の雑菌がいることでゼロエミ式が成功しているのではないかなどと全く根拠はない想像しています。コンタミする原因は培地の栄養価の高い低いがもっとも重要なファクターだと思いますが、何かそんな単純なものでない自然の調和の乱れのようなものを感じます。この点は今後、もう少しつきつめて考えていきたいと思います。


キノコの種を植えたら以下のページへ。

 ゼロエミ式キノコ栽培マニュアル(培養)

Posted by inkinken